SHMGET(2) | Linux Programmer's Manual | SHMGET(2) |
名前¶
shmget - System V 共有メモリーセグメントを割り当てる
書式¶
#include <sys/ipc.h>
#include <sys/shm.h>
int shmget(key_t key, size_t size, int shmflg);
説明¶
shmget() returns the identifier of the System V shared memory segment associated with the value of the argument key. It may be used either to obtain the identifier of a previously created shared memory segment (when shmflg is zero and key does not have the value IPC_PRIVATE), or to create a new set.
key の値が IPC_PRIVATE の場合、もしくは key に対応する共有メモリーセグメントが存在せず、 shmflg に IPC_CREAT が指定されていた場合、 新しい共有メモリーセグメントを作成する。 作成される共有メモリーセグメントは、 size 引数の値を PAGE_SIZE の倍数へと切り上げた (round up) 大きさとなる。
shmflg に IPC_CREAT と IPC_EXCL の両方が指定された場合、 key に対応する共有メモリーセグメントが既に存在すると、 shmget() は失敗し、 errno に EEXIST が設定される (これは open(2) に O_CREAT | O_EXCL を指定した場合の動作と同じである)。
shmflg は以下の内容から構成される:
- IPC_CREAT
- 新しいセグメントを作成する。このフラグが指定されなかった場合、 shmget() は key に対応するセグメントを探し、 ユーザーがそのセグメントにアクセスする許可があるかどうかをチェックする。
- IPC_EXCL
- このフラグは IPC_CREAT とともに使用し、 この呼び出しで確実にセグメントが作成されるようにする。 セグメントが既に存在した場合には、 呼び出しは失敗する。
- SHM_HUGETLB (Linux 2.6 以降)
- "ヒュージページ (huge page)" を使うセグメントを割り当てる。詳細な情報は、Linux カーネルソースのファイル Documentation/admin-guide/vm/hugetlbpage.rst を参照。
- SHM_HUGE_2MB, SHM_HUGE_1GB (Linux 3.8 以降)
- Used in conjunction with SHM_HUGETLB to select alternative hugetlb page sizes (respectively, 2 MB and 1 GB) on systems that support multiple hugetlb page sizes.
- More generally, the desired huge page size can be configured by encoding the base-2 logarithm of the desired page size in the six bits at the offset SHM_HUGE_SHIFT. Thus, the above two constants are defined as:
-
#define SHM_HUGE_2MB (21 << SHM_HUGE_SHIFT) #define SHM_HUGE_1GB (30 << SHM_HUGE_SHIFT)
- For some additional details, see the discussion of the similarly named constants in mmap(2).
- SHM_NORESERVE (Linux 2.6.15 以降)
- このフラグは、 mmap(2) の MAP_NORESERVE フラグと同じ役割を果たす。 このセグメントに対するスワップ空間の予約を行わない。 スワップ空間を予約した場合は、そのセグメントの変更が必ず成功することが 保証される。スワップ空間の予約を行わなかった場合は、物理メモリーに空きが ないと書き込み時に SIGSEGV を受け取る可能性がある。 proc(5) にある /proc/sys/vm/overcommit_memory ファイルに関する議論も参照のこと。
上記のフラグに加えて、 shmflg の下位 9 ビットは、所有者、グループ、その他への許可を指定する。 これらのビットは open(2) の mode 引数と同じ形式で同じ意味を持つ。 今のところ、システムは実行 (execute) 許可を参照しない。
共有メモリーセグメントが新たに作成される際、 共有メモリーセグメントの内容は 0 で初期化され、 関連情報を保持するデータ構造体 shmid_ds は以下のように初期化される。
- shm_perm.cuid と shm_perm.uid に呼び出し元プロセスの実効 (effective) ユーザーID を設定する。
- shm_perm.cgid と shm_perm.gid に呼び出し元プロセスの実効グループID を設定する。
- shm_perm.mode の下位 9 ビットに shmflg の下位 9 ビットを設定する。
- shm_segsz に size の値を設定する。
- shm_lpid, shm_nattch, shm_atime, shm_dtime に 0 を設定する。
- shm_ctime に現在の時刻を設定する。
共有メモリーセグメントが既に存在する場合、アクセス許可の検査と、 破壊 (destruction) マークがつけられていないかのチェックが行われる。
返り値¶
成功の場合、有効な共有メモリーセグメントの識別子が返される。 エラーの場合、 -1 が返り、 errno にエラーを示す値が設定される。
エラー¶
失敗した場合は errno が以下のどれかに設定される:
- EACCES
- The user does not have permission to access the shared memory segment, and does not have the CAP_IPC_OWNER capability in the user namespace that governs its IPC namespace.
- EEXIST
- IPC_CREAT と IPC_EXCL が shmflg に指定されたが、 key に対応する共有メモリーセグメントはすでに存在する。
- EINVAL
- 新しいセグメントを作成しようとしたが、 size が SHMMIN より小さいか SHMMAX よりも大きかった。
- EINVAL
- 指定された key に対応するセグメントが既に存在するが、 size がそのセグメントのサイズよりも大きかった。
- ENFILE
- システム全体でオープンされているファイルの総数が上限に達した。
- ENOENT
- 指定された key に対応するセグメントが存在せず、 IPC_CREAT も指定されていなかった。
- ENOMEM
- セグメントの管理情報 (overhead) に割り当てるメモリーがなかった。
- ENOSPC
- システム全体の共有メモリーセグメント数の制限 (SHMMNI) に達した、または要求された size のセグメントの割り当てが システム全体の共有メモリーサイズの制限 (SHMALL) を超過した。
- EPERM
- SHM_HUGETLB フラグが指定されたが、呼び出し元には権限がなかった (CAP_IPC_LOCK ケーパビリティを持っていなかった)。
準拠¶
POSIX.1-2001, POSIX.1-2008, SVr4.
SHM_HUGETLB と SHM_NORESERVE は Linux での拡張である。
注意¶
Linux や POSIX の全てのバージョンでは、 <sys/types.h> と <sys/ipc.h> のインクルードは必要ない。しかしながら、いくつかの古い実装ではこれらのヘッダーファイルのインクルードが必要であり、 SVID でもこれらのインクルードをするように記載されている。このような古いシステムへの移植性を意図したアプリケーションではこれらのファイルをインクルードする必要があるかもしれない。
IPC_PRIVATE はフラグではなく key_t 型である。 この特別な値が key に使用された場合は、 shmget() は shmflg の下位 9 ビットを除いた全てを無視し、 新しい共有メモリーセグメントを作成する。
共有メモリーの上限¶
shmget() コールに影響する共有メモリーセグメント資源の制限は以下の通りである:
- SHMALL
- 共有メモリーの全使用量のシステム全体での上限値。 システムページサイズが単位である。
- Linux では、この上限値は /proc/sys/kernel/shmall 経由で参照したり、変更したりできる。 Linux 3.16 以降では、 この上限値のデフォルト値は以下のとおりである。
-
ULONG_MAX - 2^24 - この値は割り当てに関する上限としては適用されない (なお、この値は 32 ビットシステムにも 64 ビットシステムにも適したものになっている)。 ULONG_MAX ではなく、この値が選ばれたのは、 古いアプリケーションが最初に現在の値を確認せずに既存の上限をそのまま増やしてしまっても問題が起こらないようなデフォルト値を選んだからである。 このようなアプリケーションでは、 上限を ULONG_MAX に設定すると値がオーバーフローしてしまうことになる。
- Linux 2.4 から Linux 3.15 では、この上限のデフォルト値は以下であった。
-
SHMMAX / PAGE_SIZE * (SHMMNI / 16) - SHMMAX と SHMMNI が変更されないとすると、 この式の結果に (バイト単位の値を得るために) ページサイズを掛け算すると、 全ての共有メモリーセグメントで使用される全メモリーの上限として、 8 GB という値が得られる。
- SHMMAX
- 1 つの共有メモリーセグメントの最大サイズ (バイト数)。
- Linux では、この上限値は /proc/sys/kernel/shmmax 経由で参照したり、変更したりできる。 Linux 3.16 以降では、 この上限値のデフォルト値は以下のとおりである。
-
ULONG_MAX - 2^24 - この値は割り当てに関する上限としては適用されない (なお、この値は 32 ビットシステムにも 64 ビットシステムにも適したものになっている)。 (ULONG_MAX ではなく) このデフォルト値が使われている理由については SHMALL の説明を参照。
- Linux 2.2 から Linux 3.15 までは、この上限値のデフォルト値は 0x2000000 (32 MB) であった。
- 共有メモリーセグメントの一部分だけをマッピングすることはできないので、 使用可能なセグメントの最大サイズには仮想メモリーの総量という別の上限が適用される。 例えば、i386 ではマッピング可能な最大セグメントの大きさはおおよそ 2.8 GB で、 x86-64 では上限はおおよそ 127TB である。
- SHMMIN
- 共有メモリーセグメントのバイト単位の大きさの下限: 実装依存 (現在は 1 バイトだが、実質的な最小サイズは PAGE_SIZE である)。
- SHMMNI
- システム全体の共有メモリーセグメント数の上限値。 この上限値のデフォルトは、 Linux 2.2 以降では 128、 Linux 2.4 以降で 4096 である。
- Linux では、この上限値は /proc/sys/kernel/shmmni 経由で参照したり、変更したりできる。
プロセス当りの共有メモリーセグメントの個数の最大値 (SHMSEG) に関する実装上の制限はない。
Linux での注意¶
バージョン 2.3.30 までは、Linux は 削除が予定されている共有メモリーセグメントに対して shmget() が行われると EIDRM を返していた。
バグ¶
IPC_PRIVATE という名前を選んだのはおそらく失敗であろう。 IPC_NEW の方がより明確にその機能を表しているだろう。
例¶
shmop(2) を参照。
関連項目¶
memfd_create(2), shmat(2), shmctl(2), shmdt(2), ftok(3), capabilities(7), shm_overview(7), sysvipc(7)
この文書について¶
この man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 5.10 の一部である。プロジェクトの説明とバグ報告に関する情報は https://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。
2020-04-11 | Linux |